測定・検査(基本工具)

表面粗さ計の使い方|測定手順と触針式粗さ測定のコツを解説

こんにちは、測定ナビへお越しいただきありがとうございます。管理人のkuniです。

金属加工や精密機械部品の品質管理において、加工された金属の表面の凹凸や仕上がり具合を数値で正しく管理することは製品の性能や耐久性を左右する非常に重要なプロセスです。

そのための代表的な精密測定器として表面粗さ計がありますが、現場で正しい使い方や設定方法に迷った経験はありませんか。

特に触針式と呼ばれる表面粗さ計は、測定子の先端部分が非常にデリケートなため、取扱いや条件の設定を誤ると正確な数値が得られないばかりか、高価な針先を破損してしまうリスクがあります。

今回は、表面粗さ計の基本的な使い方から、カットオフ値の選択方法、評価パラメータの選び方に至るまで、初心者の方にも分かりやすく丁寧に解説します。

記事のポイント
  • 1測定前に実施する触針の目視点検と破損防止
  • 2測定面における油分や切削粉の清掃手順
  • 3ワークに合わせたカットオフ値と速度の設定
  • 4評価パラメータであるRaとRzの使い分け

ポータブル表面粗さ測定機による測定

表面粗さ計の基本構造と測定の手順

表面粗さ計は、被測定物の表面に存在する非常に微細な凸凹をセンサーで感知し、その高低差を電気的な信号に変換して数値化する精密機械です。

ここでは、最も広く普及している触針式表面粗さ計を基準として、測定を開始する前に知っておくべき基本構造と、実際の測定手順におけるワークフローを順を追って解説します。

測定前に実施すべき触針と検出器の初期点検

測定を安全かつ正確に開始するためには、まず検出器の先端に取り付けられている触針(スタイラス)の初期状態を点検する必要があります。

この触針の先端には、極めて硬度の高いダイヤモンドが埋め込まれていますが、その先端曲率半径はわずか2マイクロメートルから5マイクロメートル程度しかありません。

非常に繊細な構造であるため、過去の使用時に生じた目に見えないチップ(微小な刃先の欠け)や、先端の摩耗、あるいは空気中のチリやゴミが付着していることがよくあります。

もしスタイラスの先端に摩耗やゴミの付着があるまま測定を行うと、実際の凹凸を正確になぞることができず、測定値に異常な誤差が発生してしまいます。

そのため、測定前には必ず拡大鏡や顕微鏡などを用いてスタイラスの先端状態を目視確認し、ゴミがある場合は専用の極細ブラシで優しく取り除いてください。

また、検出器全体の動きがスムーズであるか、スタイラスの測定圧が規定通りに保たれているかも併せて点検することが、再現性の高いデータを取得するための大前提となります。

注意点:触針の先端部には、指先などで直接触れないよう細心の注意を払ってください。指の油分や皮脂がダイヤモンドの針先に付着するだけで、測定時の摩擦抵抗が変わり、ナノメートル単位の精度管理において重大な測定誤差を引き起こします。

被測定物表面の油分やチリの完全な清掃方法

正確な測定を行うためには、測定器だけでなく、測定対象となる被測定物の表面状態を最適に整えることも不可欠です。

金属加工の直後のワーク表面には、切削油や防錆油などの各種オイル、目に見えないほど細かな金属粉、空気中のチリやホコリが大量に付着しています。

これらの異物がワーク表面に残ったままだと、スタイラスが異物の上を乗り越えてしまい、本来の凹凸ではなくゴミの形状を測定してしまいます。

したがって、測定作業に入る前には、アルコールを含ませた高品質なクリーンワイパーやウエスを使用し、測定面を往復させて完全に汚れを拭き取ってください。

また、拭き取りに使用したアルコールが表面に残って濡れたままだと、スタイラスのトレース中にスリップが生じて異常値の原因になります。

清掃後は、揮発したアルコールが完全に乾燥し、測定面がサラサラのドライ状態になったことを確認してから測定プロセスへと進むようにしてください。

スタイラスの測定速度とカットオフ値の設定

表面粗さ計のユニットでは、ワークの材質や図面の指示に応じて、適切な測定条件を事前に入力しておく必要があります。

その中でも、測定結果に最も大きな影響を与えるのが、測定範囲とうねり成分を除去するためのフィルター設定であるカットオフ値(λc)です。

カットオフ値は、表面の細かな凹凸(粗さ)と、より緩やかな起伏(うねり)を分ける境界の役割を果たしており、一般的には0.8ミリメートルなどが標準値として多用されます。

この値の設定を誤ると、本来測定したいはずの表面粗さにうねり成分が混入して測定値が過大になったり、逆に必要な粗さ成分がカットされて過小になったりします。

また、スタイラスの移動速度(測定速度)も非常に重要で、一般的には毎秒0.25ミリメートルや毎秒0.5ミリメートルといった非常に低速でトレースを行います。

測定前には必ず対象製品の図面に記載された指示記号を確認し、適切な判定基準となるようカットオフ値と測定速度を本体ディスプレイや接続PCから入力してください。

ワーク上に検出器を水平に配置して測定開始

条件設定がすべて完了した後は、被測定物の上に検出器を正確にセットしていきます。

この配置作業において最も重要となるのが、スタイラスがワークの測定面に対して完全に水平かつ垂直に当たるよう、配置の傾きをなくすことです。

検出器が左右に傾いていたり、測定面に対して並行でなかったりすると、移動時にスタイラスのサスペンションに無理な横方向の負荷がかかります。

これにより、スタイラスの針先が滑ってワーク表面に傷をつけてしまうだけでなく、最悪の場合は非常に高価なスタイラスそのものが破損してしまいます。

特に円筒形のワークや曲面を測定する場合は、Vブロックなどの治具を用いてワークを固定し、スタイラスの移動軌跡がシリンダーの頂点を通るよう慎重に位置合わせを行います。

配置が適正であることを確認したら、測定器本体のスタートスイッチを押し、ゆっくりとトレース動作を開始させます。

補足:ワークの端面付近から測定を開始する際には、スタイラスがワークの角から外れて下に落下しないよう、十分な余白と測定開始位置のゆとりを確保してセットしてください。

スタイラスが表面の微細な凹凸をトレース

スタートボタンを押すと、駆動部によって検出器内のスタイラスが極めてスムーズに、かつ一定の速度で被測定物の表面を移動し始めます。

スタイラスのダイヤモンド先端がワーク表面の微細な山や谷をなぞることで、針自体が上下に微細な運動を行います。

この上下方向の物理的な動きを、検出器の内部にある差動トランスなどの高精度なセンサーが瞬時に電気信号へと変換し、アンプによって増幅されます。

この測定動作が実行されている数秒間は、外部からの極めて小さな機械的振動や人の歩行による床の揺れも、センサーがノイズとして拾ってしまいます。

そのため、スタイラスが表面をトレースしている間は、測定台の近くで大きな動作をしたり、床に強い衝撃を与えたりしないよう静かに見守る必要があります。

スタイラスが設定された評価長さを移動し終え、安全に初期位置まで自動で戻り、画面に測定データがプロットされたら測定完了です。

表面粗さ計を用いた測定の失敗を防ぐ技術

表面粗さの測定は、ただ測定器を当ててボタンを押すだけでは、環境や解釈の違いによって毎回異なる値が出てしまう不安定な測定でもあります。

ここでは、測定ミスを未然に防ぎ、常に高い再現性を保ちながら、図面に指定された幾何公差を正確に判定するための実務知識と応用技術を詳しく解説します。

代表的な評価パラメータRaとRzの違いと解釈

表面粗さを管理する図面には、必ず「Ra」や「Rz」といった粗さパラメータが指定されていますが、これらの物理的な意味と使い分けを理解することが極めて重要です。

最も代表的なパラメータである「Ra」は、算術平均粗さを意味し、測定曲線からうねりを除いた粗さ曲線の平均線から絶対値の平均をとった値です。

Raは測定範囲全体の凹凸を平均化して算出するため、極所的な1箇所の深いキズや高い突起があっても、全体の平均値の中に埋もれてしまい数値に反映されにくい性質があります。

そのため、部品同士が滑らかに摺動する面など、表面全体の均一な仕上がり状態をマクロに管理したい場合に非常に有効なパラメータとなります。

一方の「Rz」は、最大高さ粗さを表し、基準長さ内における最も高い山の頂点と最も深い谷の底との高低差の合計値を示しています。

Rzは全体の平均ではなく、極所的に存在する最も激しい凹凸を直接検出するため、シール面のように「たった1本の深いキズがあるだけでガス漏れや液漏れを起こす」ような製品の品質評価に最適です。

精度の高い測定を行うためには、対象物の特性に合わせた最適な測定機器の選択が重要です。例えば、ノギスとマイクロメーターの違いで解説されているような、測定精度と用途に合わせた使い分けの考え方は、表面粗さ計を導入する際にも大いに参考になります。

スタイラスの摩耗を防ぐための保管と手入れ

表面粗さ計の心臓部とも言えるスタイラスの先端ダイヤモンドは、非常に高価でありながらも、使用頻度に応じて摩耗していく消耗品です。

特に、焼き入れ鋼や超硬合金、ファインセラミックスといった硬度の高い被測定物を繰り返し測定すると、ダイヤモンドであっても先端が徐々に削れて丸くなってしまいます。

先端が丸くなったスタイラスは、微細な谷の底まで進入できなくなるため、測定値が本来よりも小さく表示されるという深刻な問題を引き起こします。

これを防ぐためには、日々の測定前後にスタイラスの磨耗状態をチェックするだけでなく、使用後は必ず検出器の先端に保護カバーを装着することを習慣化してください。

また、保管の際には、直射日光の当たる場所や高温多湿な環境、あるいは粉塵の舞う場所を避け、クッション材で守られた専用ケースに格納することが必須です。

精密測定器の寿命を延ばし、常に正確な測定結果を得るためには、日常の手入れが欠かせません。このメンテナンスの基本概念は、ノギスの手入れ方法で詳しく紹介されている清掃や保管の重要性と共通する部分が非常に多く、日頃からの丁寧な取り扱いが精度維持に直結します。

測定時の振動を防ぐための定盤上での測定環境

触針式の粗さ測定ユニットは、ナノメートルオーダーという極小の変位を物理的に検出して処理を行っています。

このため、一般的なスチールデスクや木製の作業台の上に本体を設置して測定を行うと、近くを人が通るだけで発生する床の微弱な振動を拾ってしまいます。

これにより、表面粗さの曲線の中にサイン波状のノイズが重畳し、実際の仕上がりよりも粗い数値として出力されてしまう失敗が生じます。

高精度な測定値を保証するためには、重く振動を減衰しやすい石定盤を設置し、その上に測定ユニットを載せて測定を行うことが大原則です。

さらに、周囲の生産設備の動作振動やフォークリフトの走行による低周波振動が懸念される現場では、防振台や除振台の導入も検討する必要があります。

また、エアコンやクリーンブースから噴き出す直接の気流もスタイラスのサスペンションを揺らす原因となるため、防風アクリルカバーを設置して気流を遮断する工夫も有効です。

ポイント:測定時の温度変化も金属ワークの微小な熱膨張を招くため、可能な限り温度が一定に管理された工場検査室や測定室環境を維持し、常に一定の条件下でデータを取得することが信頼性向上の第一歩です。

測定範囲に合わせたカットオフ値とJIS規格

表面粗さの測定結果を他者と比較したり、検査成績書として正式に提出したりするためには、JIS規格に完全準拠した測定を行う必要があります。

JIS規格では、測定する表面の粗さレベルに応じて、カットオフ値や評価長さをどのように選定すべきかが厳密に定義されています。

例えば、非常に滑らかに仕上げられたラッピング加工面では、カットオフ値を0.08ミリメートルに設定します。

一般的な切削加工面では、標準的なカットオフ値である0.8ミリメートルを選択します。

さらに目の粗いフライス加工や鋳肌面では、カットオフ値を2.5ミリメートルと大きく取る必要があります。

もしこれらの選択を誤り、滑らかな面に大きなカットオフ値を適用してしまうと、加工面のうねりまで粗さとして合算され、過大な結果になってしまいます。

規格に基づいた正しい判定と測定器の信頼性を維持するためには、定期的な校正作業が必要です。これは、ノギスの校正方法で解説されているような、精度管理の基本や国家基準へのトレーサビリティを確保する取り組みと同様に、品質管理において最も重視すべきプロセスです。

形状に応じた測定用アタッチメントの選択

ものづくりの現場で測定対象となるワークの形状は、平坦な平面だけにとどまらず、非常に複雑なバリエーションが存在します。

円筒の外周面や内面、クランクシャフトの細い溝の底面、歯車の歯面、あるいは深穴の奥深い箇所など、標準的なフラットスタイラスでは物理的に進入できない形状も多くあります。

このような異なる形状に対して無理に測定を行おうとすると、スタイラスがワークと干渉して破損する重大なリスクが生じます。

そのため、各測定器メーカーからは、小穴用、深穴用、細溝用、アール面用といった、多様な交換式スタイラスアタッチメントが提供されています。

例えば、内径が数ミリメートルしかない極細のパイプ内部を測る場合は、検出器全体がコンパクトに設計された内径専用のスタイラスを装着します。

形状に応じたアタッチメントを正しく選定し、かつドライブユニットの姿勢保持具を適切に使用することで、複雑なワークでも針を折ることなく、設計通りの正確な軌跡で測定を行うことが可能になります。

高精度な表面粗さ計を用いた測定管理のまとめ

今回は、金属加工や機械部品の品質管理に不可欠な表面粗さ計について、基本的な使い方から測定時の条件設定、パラメータの正しい選び方に至るまでを網羅的に解説しました。

表面粗さの測定は、ナノメートルという目に見えない領域の凹凸を扱うため、スタイラスとワーク表面の完璧なクリーニング、そして振動を遮断した静粛な測定環境の確保が何よりも優先されます。

また、図面の要求に合わせてRaとRzの特徴を適切に使い分け、JIS規格に合致したカットオフ値を選択することが、現場間でのデータの再現性と信頼性を担保するために重要です。

これらの基本知識と技術を日々の業務に反映させることで、製品の摩耗防止や摩擦制御、外観品質の向上を高い次元で維持することができるようになります。

正確な製品仕様や測定方法については、各測定器メーカーの公式サイトに記載されている最新の取扱説明書やJIS規格の解説書をご確認ください。

最終的な設計品質の判定や測定手順の運用方法については、自社の品質保証部門や技術部門の専門家にご相談ください。

(出典:株式会社ミツトヨ)

Q1
触針式と非接触式(レーザー・光干渉)のどちらを選ぶべきですか?
回答

金属加工現場で最も一般的かつJIS規格の基準となっているのは触針式です。検出器の先端にあるスタイラスと呼ばれる触針をワーク表面に接触させ、なぞることで直接凹凸を測定するため、高い信頼性があります。一方、非接触式はレーザーや光干渉を利用して測定するため、ワークを傷つけたくないガラス面や、極めて軟らかいゴム・樹脂などの測定に適しています。
Q2
測定値が毎回微妙に異なる場合の主な原因と対策は何ですか?
回答

測定値のバラつきの主な原因は、測定子先端への微細なゴミの付着、被測定物表面の油分やチリの残留、周囲からの微小な振動の3点です。対策として、測定前にスタイラスとワーク表面を専用のアルコールやクリーンワイパーで入念に清掃し、周囲の歩行やドアの開閉などの振動要因を排除した状態で、防振台や石定盤の上で繰り返し測定を行ってください。
Q3
表面粗さの測定においてカットオフ値の設定が重要な理由は何ですか?
回答

カットオフ値は、測定データから表面のうねり(うねり成分)を取り除き、純粋な表面粗さ(細かな凹凸)だけを抽出するためのフィルター境界値です。この値を誤って設定すると、うねり成分が粗さ値として計算されてしまったり、逆に必要な粗さ成分が除去されてしまったりして、全く異なる測定結果になります。JIS規格に基づき、想定される粗さに適した値を選択することが不可欠です。

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